2021
05
01
還暦おしさんの冒険(3)『やまぶどうとり』
ある日、パンプキンバンプキンバンプキンが言いました。
「おう、やまぶどうとりに行くど!」
指示に従い、姫川の彼の所有地へ向かいました。
今は放置されているサイロを見たとき、
『風の谷のナウシカ』が頭に浮かびました。
「ほら、あそこ」
彼の指先は鉄塔の近くにあるやまぶどうの木。
中学生のときなら、一目散に鉄塔にのぼったでしょう。
でも、脳裏をよぎったのは、「死ぬかも?」
相棒はこう言いました。
「おめぇが登れ!」
彼ははさみを渡し、下で籠をかまえます。
ここで落ちて死んだら、お坊さんはなんていうだろう。
「死因は滑落死」
「やまぶどうをとろうとし落ちて死んだのです」
お通夜の席の反応を想像したとき、
冷汗が出ました。
パンプキンバンプキンバンプキンはこう言いました。
「これを消毒した瓶に入れておけばいいだけだ」
「焼酎も砂糖もいらねぇ!」
「うめぇど!」
それからおよそ2年。
瓶の中のやまぶどうは白カビにおおわれています。
私の予感は当たっていました。
ナウシカもたしかこのようなものを観察していました。
パンプキンバンプキンバンプキンにこのことを伝えると
彼はいいました。
「ワリイ」
「ちがってた!」
2021/05/01 (Sat.) Comment(0) ちどりあし日記